ソーラーカーレース3年目の挑戦と進化

郷野 翔太朗(2021年 普通科卒業)

 2020年にスタートした中高ソーラーカープロジェクトも今年で4年目を迎えています。’21年夏の鈴鹿大会でソーラーカーレース初参戦を果たし、翌’22年の白浜大会では初表彰台を獲得するなど、プロジェクトとして順調な滑り出しを見せてくれました。そして2023年、前年3位表彰台を獲得した白浜大会に再び挑んだ中高自動車部。今回は生徒たちの様子を中心にその模様をお伝えします。現地にアドバイザーとして駆けつけていただいた、大学ソーラーチームの大学生メンバーによる大会レポートも大学ウェブサイトに掲載されていますので、そちらも併せてご覧ください。

これまでの大会で自動車部は、高校生部員からのみ選抜を行いチームを編成していましたが、今回は新たに中学生2名をメカニックとして選抜しています。担当する作業内容はマシンの清掃や現地でのタイムキープ、ピットイン作業の補助など基本的なものに留まりますが、中学生のうちからソーラーカーレースに慣れ親しむ上で、とても大切な経験となります。チーム編成もさることながら、車両自体にも改良が加えられていました。例えば、車両側面後方への『エアロスタビライジングフィン』の追加や超軽量ホイールの装着などです。どちらも、高速走行時の操縦安定性や抵抗軽減に関わる大切な改良で、直線での高速走行が主体となる白浜大会では効果を発揮します。

一歩ずつ改良を加えながら迎えた本番。会場は昨年と変わらず、南紀白浜空港旧滑走路を使用します。一方で、開催時期が変更となり、昨年度’22大会は9月開催だったのに対して、今年度’23大会は11月開催となりました。昨年度大会では台風の接近と日程が重なった影響で天候不良に悩まされましたが、開催が11月となったことで穏やかな秋晴れのなかでのレースができるかと思いきや…大会当日は暴風雨に見舞われます。海に近く、風を遮るものが何もない滑走路特有の環境が仇となり、テントが飛ばされそうな程の強風が部員たちを襲います。強風に加えて、雹が降り始めてしまうほど天候が悪化してしまいます。初日午前開始予定だったレースはキャンセルとなってしまいましたが、午後から天候は回復し初日午後、翌日のレースともに無事スタートが切られました。

今年何よりも大きな変化だったのは、レース戦略の立案やペース管理を高校生が行うようになったこと。太陽光をエネルギーとするソーラーカーには電力消費量(走行ペース)と発電量とのバランスを考慮した特有のレース展開が求められます。それ故に、過去2回の大会においては大学チームに戦略立案をお願いし、その戦略を高校生が自ら運用して大学チームの戦略を学んでいました。今回、大学チームからのバックアップは大学生3名のみ。これまで大学生から学んできたことを、実践するべく高校生が主体となって、走行ペースやピットタイミングを決定します。

レースは初日午後と翌日午前午後の全3戦。ソーラーカーの充電を切らさないように、発電量と相談しながら全3戦をなるべく速いペースで走りきらねばなりません。大学生から学んだように戦略を立てますが、それはあくまでも「プラン」でしかありません。実際に走ってみると発電量が思ったよりも伸びず、初戦終了時にいきなり充電残量に余裕がない状態になってしまいます。追い打ちをかけるように、車両の状態をモニターしているプログラムにも不具合が発生してしまいます。一時はかなり危機的な状況でしたが、大学生のサポートもあって翌日午後には立て直します。その後は安定して走行を重ね、初参加の中学生2名が受け持っていたピット作業もとてもスムーズに行われます。

初日以降、再び天候が崩れることはなかったものの終始強風に悩まされ、速度規制や先導車による誘導など多くの場面で臨機応変な対応が求められた今回の大会でしたが、ミスを最小限に留めて中高自動車部は走り切りました。厳しい戦いとなった2日間の総合結果はクラス4位。惜しくも2年連続表彰台獲得とはなりませんでした。

昨年の成績からは順位を1つ下げての完走となりましたが「中高生主体」で初めて挑んだ大会であるということを鑑みれば、誇れる成績であることは間違いありません。冒頭でも述べたようにこの中高ソーラーカープロジェクトは今年で4年目を迎えています。この4年目というタイミングは社会人とは違い、3年で全メンバーが入れ替わってしまう、いわゆる「代替わり」が起こるタイミングであり、この4年目に、これまでの経験や技術の継承が出来ていたかなどプロジェクトととしての粗が露呈するタイミングでもあります。しかし、中高ソーラーカープロジェクトはそのパフォーマンスを大きく落とすことなく、今年度の白浜大会を完走し、また各所において前年度からの細かな改善も見られました。まだまだ先の話ではあるかもしれませんが、いつかは「オール中高生」での参戦を目指して一歩ずつ進化して行ってほしいと思います。

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